遺産分割に期限はあるのか
1 遺産分割に期限はない
現在、遺産分割に期限はありません。
そのため、相続開始日から数十年が経っているのに、いまだ遺産分割が終わっていなかったとしても、罰則はありません。
もっとも、相続開始日から長い年月が経過しているケースだと、本来の相続人が亡くなってさらに次の相続が開始したり、相続人の一人が認知症になって遺産分割ができなかったりと、相続が非常に複雑になる場合もあります。
相続人の中に認知症の方がいるケースについては、こちらの記事もご覧ください。
このように、遺産分割については、期限がないからといって放置してしまうと、いざ遺産分割を行おうとしたときに、時間や労力、費用が多大になるおそれがありますので、なるべく早めに遺産分割を行うことをおすすめします。
2 遺産分割に付随する手続きには期限がある場合も!
遺産分割自体に期限はありません。
しかし、遺産分割に付随する手続き、例えば、相続税の申告や準確定申告、遺留分侵害額請求、相続登記等については期限があります。
以下では、期限がある代表的な手続きとして、相続税申告、遺留分侵害額請求、相続登記の3つをご説明します。
3 期限がある相続手続き
⑴ 相続税の申告
相続税の申告は、相続があったことを知った時から10か月以内に手続きを行う必要があります。
10か月以内に手続きを行わない場合、無申告加算税や延滞税等を支払わなければならなくなったり、相続税を抑える特例が使えなくなったりするといったペナルティを課せられる場合があります。
そのため、相続税の申告は、10か月の期限内に間に合うように行うことが大切です。
⑵ 遺留分侵害額請求
遺言書の内容が不平等な場合や、ある相続人が被相続人から多額の生前贈与を受けていた場合、特定の相続人は、遺言書や生前贈与で利益を得ている相続人等に対し、遺留分侵害額請求を行える場合があります。
遺留分侵害額請求は、1年間の期限があり、これを過ぎてしまうと、たとえ遺言の内容がどんなに不平等であったとしても、遺留分が認められなくなってしまう場合がありますので注意が必要です。
⑶ 相続登記
法改正により、令和6年4月1日から、相続登記が義務化されました。
そのため、家や土地の名義を被相続人名義のままにして放置しておくと、10万円以下の過料を課せられる場合があります。
遺産に不動産がある場合、遺産分割がまとまらないと不動産の名義変更ができないため、遺産に不動産がある遺産分割については、実質的には期限が存在するということになります。
また、中には相続した建物が登記されていなかったというケースもあります。
こうした場合に備えて、早めに相続登記の準備を進めることが重要です。
寄与分がある場合の遺産分割 相続人の中に認知症の方がいる場合の遺産分割